16.「特殊」コンベンションの悪夢

この記事は約 9 分で読めます

 最初に書いておくけど、これは俺の個人的意見だからね。

 今回は、「独自色」豊かなコンベンションに対して、チクリとメスを入れてみようかな?


 サークルをやっている以上、一度はやってみたいコンベンション。

 プレイヤーをしている以上、一度は参加してみたいコンベンション。

 それは、様々な人が様々な人と様々なTRPGを楽しむという、TRPGプレイヤー垂涎のイベントでもある訳で。

 俺なんかはコンベンション嫌いな人間なんで、コンベンション自体参加しようとも思わない(開催はしてるけどね)んだけれど…まあ、普通に考えればみんなコンベンションに参加する!というのはそれなりに大きなイベントなんじゃないかな。

 それと同じように、コンベンションの運営側にしても、コンベンションを開催する!というのは物凄く大きなイベントにあたるんだろうね。

 俺自身はあまり参加回数は多くない(開催数はそれなり、かな?)けど、気合いの入ったコンベンションと言うのも良く話に聞く。

 いや、気合いの入ったコンベンション自体に文句をつもりは全然ないんだけれど。

 むしろ、気合いの入っていないコンベンションなんて逆に参加する価値も開催する価値もないと思うけれど。

 それは違うだろう!?と言いたくなるコンベンションもある、っていうお話です。


 コンベンションを開く時、開催者というのは少しでも良いコンベンションを行いたい、と考えるのが普通だろうね。

 それ自体は実に自然な事だし、「良い物を作ろう」と努力する事はとても良い事だと思う。

 でも、その想いが間違った方向に行っているんじゃないかな?と思う事も多々あるんだよね…

 特に、これは地力のない開催者がコンベンションを開く時に良く見かけられる事なんだけど、その開催者だけのオリジナル要素をふんだんに取り入れたコンベンションと言うのをしようとして、かえって失敗しているコンベンションが多いようにも思える。

 確かに、その開催者だけの要素を持ったコンベンションというのは他にはできない事だから、それが成功すれば次のコンベンションに繋がるだろうし、何よりも「だけ」という言葉に意欲を燃やして、挑戦してみたくなる気持ちは凄く良くわかるんだけどね。

 でも、実はそれはコンベンションが失敗する一番大きな要素でもあるんだよね。

 これは、非常にキツい意見なんだけれども。

 そもそも、「フリープレイを主体としたコンベンション」とか、「共通テーマを持ったシナリオでフリープレイを行うコンベンション」とか、あるいは「一つのシステムだけしか使わないコンベンション」っていう、いわゆる普通のコンベンションというのは、それまでの数多くの人の経験がある訳だから、それこそ今これを読んでいるみたいにインターネットで情報を探して参考にする事ができるんだけど、オリジナルのコンベンションっていうのは基本的に「情報を参考にする」事がまるでできない訳だ。

 そうなると、結局は開催者側の実力オンリーでコンベンションを成功させなければならない訳だから、自然と失敗する可能性も高くなってしまうのさ。

 更にキツイ意見は続くんだけれども。

 同じく、「普通のコンベンション」というのは、基本的に参加する人のほとんどは「普通のコンベンション」の参加経験がある訳で、ある程度の「参加者側からのフォロー」や「常識」といった物が期待できる訳なんだ。

 これは開催者からするととても大きなメリットになる。

 ある程度の制御さえできれば、参加者のほとんどは半ば自動的に制御されてくれるという訳だから。

 しかし、オリジナルのコンベンションになると、オリジナル要素がある為に参加者の「経験」や「常識」に微妙な(あるいは大きな)隔たりができてしまう訳で、その結果開催者の実力だけで参加者を制御しきれなければならないという事になってしまうんだね。

 実際問題として、この2つの問題を開催者の実力だけでクリアーするには、相当の数の修羅場経験が必要だろうね。


 さて、そういった訳で、「オリジナルの”特殊”コンベンション」を開催して、それを成功させるにはそうとうの実力を必要とするという事には賛成してもらえただろうか?

 更に、”特殊”コンベンションの問題点は続くんだけどね。

 さて、実力は十分あるとして、「特殊コンベンション」を開催するにはまだまだハードルが残っているんだ。

 まず1つは「広告で”特殊”コンベンションである事を十分にわからせる事」。

 広告を見て、「普通のコンベンション」のつもりで参加した参加者がいた場合、はっきり言って失敗する可能性が極端に大きくなるんだ。

 なにせ、その参加者にしては「騙された」も同然だからね。

 そして、2つ目は「広告の時点で”特殊”コンベンションのどこが面白いのかを明確にする」事だね。

 言い方は悪いけれど、「特殊コンベンション」というのはどんな物であれ、参加者にとっては初挑戦の物になるだろう。

 でも、基本的に参加者っていうのは臆病だから、よほど「面白そうだ」という感想を抱かない限り、ほいほいと参加してくれる物じゃない。

 参加者が極端に少ないコンベンションなんて、半ば失敗したも同然だろ?

 そして、3つ目は「”特殊”な部分が本当に面白い事」だね。当然の事なんだけれど。

 更に、その面白さを十分に伝える為に、かなりの準備期間とリハーサルの回数を要する、っていう所がポイントかな。

 どんなに「面白い」ハズの物でも、テンポが悪かったり、途中で何度も詰まってしまったりしていては、絶対に伝わらないものなのさ。もちろん、テンポだけが重要な訳ではないけどね。

 そもそも、「新しい要素」を思いついた時点で舞い上がってしまって、それが本当に「面白いかどうか」という所まで考えは行っているのかな?

 「SFの9割はクズですね」とインタビューされたとあるSF作家の言葉だけれど、「SFに限らず、全ての物の9割はクズだ」と言うのはまごう事なき事実なんだ。

 そう、唐突に思いついた「すばらしいアイディア」であっても、実はその9割はクズに過ぎなかったりするんだよね。

 でも、それが本当に面白いかどうかなんて、一度やってみないとわからないだろうから、結局は仲間内でテストプレイしてみるしかないんだけど…それをやっているのかな?と疑うようなコンベンションもあるのは事実だよね…困ったもんだ。


 さて、と。

 もう、ここまでの文章で、「特殊」コンベンションは成功させるのが本当に難しいという事をわかってもらえたのではないかと思うんで、そろそろ結論に行こうかな。

 そもそも、「普通」と言われるコンベンションですら、それを実行するには様々な能力と努力、情報を必要とする訳なんだ。
 そして、その「普通」のコンベンションですら、それを何度も繰り返して、経験を積まない事には良いコンベンションというのをする事は難しい。

 そんな状態なのに、「普通」のコンベンションですら経験のない(あるいは浅い)開催者が、特殊なコンベンションを開こうというのは、とても無理のある事だと思う。

 だから、最初は「普通」のコンベンションで経験を積んで欲しいな。

 特に、それでなくても最近のTRPG市場ではコンベンション自体が少ない訳だし、それだけでも十分に人が呼べるんじゃないかな?

 そして、「普通」のコンベンションの経験を十分に積んで、そして十分に勉強してから、少しずつオリジナリティを交えていって欲しい

 そうする事で、「普通」から「特殊」への移行はゆっくりと行う事ができるし、段階を踏む事で色々勉強にもなるはずだよ。

 どんな事でも、基本無くして応用はできないんだから、コンベンションに対しても、焦る事無く、基本からじっくりと作っていって欲しいな。

この記事を書いた人 Wrote this article

如月翔也

 如月翔也です。TPGとアナログゲーム、PCが大好きな中年男です。このブログでTPGについて色々触れています。コメントを貰うと非常に喜ぶのでお気軽にコメントをお願いします。