ファンタジー系のTRPGではほぼ確実に存在する「盗賊ギルド」。
しかし、この「盗賊ギルド」というのは、どのような物なのでしょうか?
今回は、それについてちょっと考えてみましょう。
まず、ギルドという物の存在について考えましょう。
ギルドというのは中世の「同業組合」を指す言葉です。
中世のギルドは同じ職種の者が集まって、職種全体の利益を守り、同時に職種全体の技術を向上させる為に作られた団体であり、徒弟制度とはまた異なる規律によって作られた集団でした。
例えば刀鍛冶の師匠についている弟子は、まず師匠に技を教えて貰った後、自分の作った刀をギルドに提出して「ギルドに加盟できるか否か」を査定して貰います。
この結果、「ギルドに加盟できない」とされた者は独立開業を許されず、師匠の元で修行を続ける事になります。
「ギルドへの加盟を許す」とされた者は晴れて組合公認の技術者として独立開業を行う事ができる訳です。
この「ギルド公認」というのは「まともな物が作れる」という証であり、例え公認されていない物が独立開業しようとも、技術が保証されない店では誰も物を買わなかったともいいます。
さて、このような意味での「同業組合」ですから、盗賊ギルドでは「盗賊」としての技術を育成し、同時に盗賊全体の利益を守る事を目的としている訳です。
しかし、盗賊行為はあくまで犯罪行為であり、本来的には認められる物ではありませんし、技術が無くても盗賊行為は行えます。
それでは、何故、盗賊ギルドは存在するのでしょうか。あるいは、ギルドに入る理由などあるのでしょうか?
実は、盗賊ギルドというのは権力構造と密接な関係があるのです。
権力者は盗賊から自分の財産を守る為にギルドに保証料を払います。
保証料を取ったギルドは、ギルドに所属する盗賊に対し、「権力者への盗賊行為」を禁止します。
これによって権力者は盗賊からの被害を食い止める事ができる訳です。
しかし、ギルドに所属しない盗賊は、保証料を払った権力者に対して盗賊行為を働く可能性があります。
そこで、ギルドはギルドに加入しない盗賊を制裁(大概は死を持って制裁とします)する事により、盗賊のギルドへの加入を勧めると同時に、権力者に対して盗賊ギルドの存在の必要性をアピールします。
権力者としては盗賊ギルドを解体する事によって盗賊からの被害を増やすよりも、盗賊ギルドの存在を(暗に)認める事で自分の財産を保証しようとするのです。
このような経緯により、ほぼ全ての盗賊は(命が惜しいですから)盗賊ギルドに加入しますし、権力者も(財産が惜しいですから)盗賊ギルドの存在を容認します。
こうして、盗賊ギルドは社会の暗部を一身においながらも、確実にその存在を堅持し続ける訳です。
非常にキタナい、大人の話ではありますが、その分現実の世界と通じるリアリティもありますね。
このように、盗賊ギルドは実に恐ろしい存在です。
貴方のキャラクターも、「盗賊の利益に反する」という理由で盗賊ギルドに狙われないよう、気をつけたい物ですね。
もし、貴方のキャラクターが英雄と呼ばれるキャラクターであれば、あえて社会の暗部に正対するのも英雄らしい一つの行動かも知れません……しかし、背後には常に気をつける必要がありそうですね。