セッションが「成功だ」と言えるレベルで無事に終了し、PC達は「報酬」となる金銭やアイテムを得て、そして「経験点」を得る瞬間。
これは、マスターにとってもプレイヤーにとっても胸をなで下ろして安心できる、数少ないシーンの一つでしょう。
しかし、こんな安心できるシーンでも、TRPGを「面白くなくする」要素が隠れているのです。
今回はその点について考えてみましょう。
TRPGの代表的な(不可欠ではありませんが)面白さの一つとして、「キャラクターが(心情的/データ的に)成長する」という楽しみがあります。
物語的に見ても「主人公」はストーリーを通してなにがしかの成長を見せる物ですし、ゲーム的に見ても「主人公」がパワーアップするというのは良くある(かつ面白い)事ですから、キャラクターの成長を楽しむ事自体には何の問題もありません。
しかし、成長というのは「報酬」であり、「報酬」というのはなにがしかの代償を払わねば手に入る物ではありませんし、そうやって手に入れた物でない限り、「楽しむ」事は出来ないものなのです。
基本的に経験点やアイテムや金銭という報酬はGMが決定し、与える物です。
従って、プレイヤーが同じ様に熱心に楽しみ、同じ様に賢明なアイディアを数多く実行したとしても、その時のGMによって与えられる報酬は異なってくるのです。
実は、これが「TRPGを面白くなくする要素」なのです。
簡単に多量の報酬を与えてくれるGMの元ではキャラクターはどんどんと成長し、あっと言う間にシステムのフォローできる範囲のレベルを超えてしまいます。
これでは、システムを楽しむ事や、一つの技能・呪文をどのように使いこなすかという事に頭を捻らせる楽しみが無くなってしまい、すぐにシステムに飽きてしまい、それを繰り返す内にTRPGに対して「飽き」を感じてしまう事になってしまうのです。
更に、プレイヤーが1つのキャラクターを使いこなすという頭の使い方をしなくなってしまう為、キャラクターへの理解度も低くなりがちで、結果として「TRPG」らしくないゲームになってしまう事が多々あるのです。
逆に、いくらプレイヤーやPCが頑張っても極少量の報酬しか与えてくれないGMの元ではキャラクターはいつまでたっても成長せず、いつまでたってもシステムの一部しかプレイできない状態になってしまいます。
また、キャラクターがいつまで立っても広がりを持たなくなってしまいますから、どうしても行動や作戦も「一番得意で、有効な物」というマンネリになりがちですし、新しい技能や呪文を得てそれを使いこなすという楽しみがありませんから、やはりすぐに飽きがきはじめてしまうのです。
更に、プレイヤーがキャラクターの「今できる事」に執着しがちになってしまいますから、冒険と言うよりもせせこましい「裏家業」という雰囲気が拭えなくなってしまい、結果として「冒険」らしくないゲームとなってしまうのです。
このように、冒険によって与えられる「報酬」のいかんによって、TRPGは楽しい物にも楽しくない物にも変化して行ってしまうのです。
TRPGが「面白くない」方向に変化していく事を防ぐには、基本的にGMは「報酬」に対して1つの事を留意すれば、それで問題はありません。
それは、「報酬」は多すぎず、少なすぎない事です。
プレイヤーやPCが「今のキャラクターに可能な事」を吟味して、それを味わい尽くした所で次の段階へと成長できるようなペースでの「報酬」の与え方ができれば、プレイヤーもGMも長く、しかも十分に楽しめるはずです。
そして、それはTRPGを「飽きない」為のテクニックでもあり、また「飽きさせない」為のテクニックでもありますから、今のTRPG状況においても意味のあるテクニックなのではないでしょうか?
報酬は多ければ多い程良い、というのは現実の世界での常識ですが、やはりゲームとして楽しむからには「楽しめる程度の報酬」で満足していたい物ですね。
「欲張り物にはしっぺ返しが待っている」というのは、どうも御伽話だけの事ではない様ですね……?