最初に書いておくけど、これは俺の個人的意見だからね。
前々回の「ギャグプレイヤーは嫌いです」を書いて、ある意味なにかが吹っ切れましたので、Dark Side作成の時点から書こうと思っていたネタに挑戦してみましょう。
如月翔也のちょっとしたトラウマ話なんですが…良ければ最後までお付き合い下さいね。
TRPGのコラムとか考察とか、偉そうな事を延々とタレ流して、惨めにHIT数を稼いでいる如月翔也なんですけど、実は私、「コンベンション恐怖症」と「D&D拒否反応」が若干有ります。
随分昔に比べるとかなり薄れてきているのですが、未だに「自分の身内がする以外のコンベンション」は苦手ですし、「身内がする以外のD&D」はやりたくない、という気持ちがいまだについて回るのです。
実は私、初心者の時にコンベンションに行って、凄く面白くなかった(というか、苦痛だった)事があるんです。
その時プレイしたシステムが「D&D」であり、その為にいまだにD&Dとコンベンションにはいわれのない隔意を抱いてしまうんですよね。
今回は、その経緯からご説明いたしましょう。
それは、私が中学生の時だったと思います。
それまで仲間内でしかTRPGをやった事のなかった私は、どこかのTRPGサークルに入ってみたいと常々考えていました。
しかし、雑誌などにのっているサークルメンバー募集にいきなり応募するのも気が引けましたし、それよりも一度お試しでプレイしてから、よさげなサークルに応募してみようと思い立ちました。
そこで、雑誌に載っているコンベンション情報をチェックし、街のショップの掲示板なども見た上で、「初心者でもOK」といううたい文句に騙され、札幌の市民会館で行われると言う大規模なコンベンションに参加する事にしました。
そこは広い会場で、人も大勢集まっていました。
時間よりも若干早く到着した私は、コンベンションが始まるまでの間、ドキドキとワクワクとソワソワの入り交じった、今にしてみると初心者故の緊張と興奮の入り交じった気持ちになったものです。
コンベンションが開始され、GMの紹介が行われました。
そこでは様々なシステムがプレイされる予定でしたが、私はコンベンションは初めてでしたし、何よりも知らないシステムが多かった為、GM紹介のコメントでプレイする卓を真剣に選びました。
私が決めたのは、D&D(低レベル向け)という卓でした。
私がそれに決めたのは、まずGM紹介で「初心者でも大丈夫です」と言われた事、そのGM以外は「初心者でも大丈夫です」とは言わなかった事、D&Dは2〜3回ほどプレイした経験があった事、そして直接GMに「D&Dは戦士で2〜3回プレイした事があるだけなんですが、大丈夫ですか?」と尋ね、大丈夫だと言われたからです。まあ、GMも言う分にはただですし、人数の確保はメンツの確保にも繋がりますからね。真剣に聞いて真剣に騙された私が大馬鹿だっただけの事なんですが。
本当は、「じゃ、いいです」と言って黙って帰ってくるのが正解だったのでしょうが、コンベンション経験のなかった私にはそんな見極めがつくはずもありませんでした…
そして、キャラクター作成が開始されましたが、そこで私は何かおかしい事に気がつきました。
なんと、プレイヤーの内4人がダイスを振っていないのです。代わりに、そのプレイヤーは既に記入されたキャラクターシートをテーブルの上に広げました。
そして、GMが私ともう1人にこう言いました。
「じゃあ、クレリックと、マジックユーザーを作ってね」
GMによると、他のプレイヤーのクラスは決まっているので、足りないのはこの2つだけなのだという事でした。
私は、この時点で怪しい事に気がつくべきだったのです。
それに気づいてその場を去っていれば、これ以上不愉快な思いをしないですんだのですから。
私ともう1人のプレイヤーはどちらのクラスを選ぶかで話し合い、結局はどちらもクレリックを希望し、しかもどちらもD&D初心者であった為、ダイスでクラスを決める事になりました。
私はダイスの目が走らず、マジックユーザーを受け持つ事となりました。
ようやくキャラクターが完成し、プレイが開始されました。
そして、自己紹介が始まりました。
そこで、私はもう1つの問題に気がついたのです。
なんと、私ともう1人のキャラクターはレベル1なのに、他のプレイヤーのキャラクターは5レベルだったのです!
確か、戦士が5レベルで、盗賊・エルフ・ハーフリングはどうだったかは覚えていませんが。
確かに、D&Dで言えば1レベルも5レベルも同じ低レベルと言えない事はないでしょう。なにせ、D&Dでは最大36レベルまであるのですから。
しかし、D&D初心者で、コンベンション初心者な私は、「そういうものなのか」としか思いませんでした。
自己紹介が終わった後、GMはこう告げました。
「じゃあ、新しい2人は後で登場するから、ちょっと休憩してて」
そう言うが早いか、GMとプレイヤーが会話を始めたので、私はただ黙って手渡された1レベル魔法リストを読み、どの呪文を選ぶかを考え始めました。
ま、結局はスリープかマジックミサイルしか選べないも同然なんですが。
それでも、もう1人のプレイヤーよりはマシだったと言わざるを得ないでしょう。なにせ、D&Dでは1レベルクレリックは呪文を使えないのですから。
そして、GMとプレイヤー4人によるプレイが30分ほど続き、やっとの事で私の出番が回ってきました。
そのプレイの最中、私のキャラクターは何らかの理由でシーフさんに首を狙われている事が発覚し、驚愕しましたが、「D&Dって、そういうゲームなのか」と、自分を納得させるしかありませんでした。
そして、私の出番。しかし、GMは無情にもこう言いました。
「じゃあ、上手くパーティと合流して」
今であれば、できるか、ドアホ!と叫ぶなり、殺すぞ、クソマスター!と顔面にワンパン入れたりもできるでしょうが、なにせ当時の私は(以下略)です。素直に応じるしかありませんでした。
「じゃあ、クレリックさんとは知り合いでいいですか?」
ですが、それに対するマスターの答えはこうでした。
「いや、クレリックは今酒場にいないし」
どうやら、私のキャラクターは酒場にいるようです。始めて知りましたよ、マスターさん。
状況が分からないままでは仕方がないので、前のGMとプレイヤーの会話を思い出してみました。
確か、盗まれた宝石がどうこうと言っていた記憶があったので、「ちょっとずるいかな?」とは思いつつも、「まあ、シナリオに絡まないと、マスターも困るかも知れないし」と思い、私はマスターにこう宣言しました。
「じゃあ、酒場のマスターに、自分は魔術師である事を話し、腕の立つ仲間と仕事を探していると伝えます」
自分で言うのもなんですが、ステレオタイプな宣言です。
しかし、その時の私にはこれでいっぱいいっぱいだったんですから、仕方がないですね。
その結果、どんな結末になろうとも、悪いのは私の宣言なんですから…
すると、マスターはこう答えました。
「酒場のマスターは、”じゃあ、いい仲間と仕事を紹介してやるよ、ついてきな”という」
D&Dというのは非常にハードな世界らしいんですが、そのときの私はD&Dの世界には疎く、酒場のマスターが私のキャラクターを騙そうとしているなんて事には全然気づきませんでした。
そうです、これも私が悪いんです。なにせ、D&Dはパーティの仲間(候補)の首をパーティの仲間(候補)が狙うほどにハードな世界なんですからね。
そして、私は迂闊にもこう答えてしまったのです。
「じゃあ、酒場のマスターについていきます」
迂闊と言えば、こんな卓に入ったのも迂闊だったんですが、この宣言も迂闊であった事は(GMにとっては)明白だったのでしょう。
GMは、続いてこう言いました。
「マスターはちょっとくねった路地に入っていくよ」
この段になって、私も「まずいな」と感づきました。
「できれば戻ろうと思うんですが…」
しかし、マスターは逃がしてくれませんでした。
「無理だね。気がつくと、後ろに屈強な男が立っていて、君の背中を押してくる」
無理と言われては仕方がありません。仕方なく、せめて逃げ道を確保しようと、私はこう宣言しました。
「じゃあ、何かあった時に道に迷わずにすむよう、道をおぼえておきます」
これが私の、そして私のキャラクターの最後の抵抗でした。
マスターはその宣言を受諾した後、私のキャラクターが「盗賊ギルド」なる建物に連れ込まれたと宣言しました。
さすがにそれはマズイと思った私は、マスターにこう言いました。
「連れ込まれる前に、スリープを使いたいんですが」
マスターの答えはこうでした。
「そんな隙はなかった」
そして、マスターは淡々と、私のキャラクターが「盗賊ギルドの場所を知ってしまった罪」で処刑されたと宣言しました。
「それは…なんとかできませんか?」
私はマスターに聞きましたが、マスターは黙って首を振るばかりでした。
「さて…どうしましょう?」
ゲーム開始40分、実質の私のプレイ時間10分にしてキャラクターを失ってしまった私は、途方にくれてマスターに尋ねました。
もしかしたら、新しいキャラクターで再チャレンジもあるかも、と考えたのです。実に、浅はかですね。ここで私が取るべき行動は、「黙って帰る」か、あるいは「そのマスターが2度と喋る事ができない程に殴り倒す」事だったんですから。
マスターはそんな私にこう言いました。
「じゃあ、なんとかなるかも知れないから、待ってて」
これで、私の始めてのコンベンション、始めてのコンベンションでのD&Dが終了しました。
マスターの「待ってて」の台詞を素直に聞き入れた私は、残りの4時間30分に渡ってただ椅子に座り、家から持ってきたD&Dのルールブックを読むだけでした。
そして、ゲームが終了してマスターが一言言いました。
「いやぁ、プレイヤーの行動いかんでは手があったかも知れないんだけどね…」
そして、私の顔をのぞき込んで、こう言いました。
「どうだった?面白かった?」
わざわざ聞く事もないでしょう。あまりの扱い、あまりの屈辱に、私は半分涙目になっていたのですから。
こうして始めてのコンベンションが終了し、私は黙って家に帰りました。
家を出る時には浮かれていて、帰ってきてからは何も話さずに部屋に引きこもった子供を見て、心配したのでしょう。後で父親が部屋を訪れました。
「今日、なにかあったのか?」
そういって父親がドアを開けた時、私はちょうどコンベンションのチラシと、そのコンベンションの広告が載っていた雑誌をバラバラに引きちぎっているところでした。
「いや、別に」
私はそれだけを父親に伝えると、早々に父親を部屋から追い出し、「コンベンション」と「D&D」は死んでもやらない事を誓ったのです。
まあ、その後、良心的なサークルに出会い、そのサークルでの活動の中で「コンベンション」や「D&D」に対するわだかまりは徐々に薄れていきましたが…
そんな訳で、私はいまだに「コンベンション恐怖症」であると同時に、「D&D恐怖症」なんですよ。
それを無くしたいからこそ、サークルでコンベンションを開催したり、自分でD&Dのマスターをやったりしてはいるんですけどね…
まあ、ここまで書けば、私が何を言いたいかは察していただけると思います。
別に、初心者を大事にしろとか、そう言うわけではないんです。
ただ、トラウマって一生ものですから、できるだけイベントをする人は、いいイベントで終われるように、ちゃんとして欲しいと思うんです。
私はマスターの巡り合わせが悪かっただけなのかも知れない。
でも、そのマスターを入れた責任は、イベント開催者にもあるんですよ…?
これは基本的に30年も前の出来事で、今はそのような出来事はほぼないと思います。コンベンションが恐い、と言いたいのではなく、コンベンションを開くなら一期一会なのでGMを含めた参加者皆が楽しめるようにしっかり計画しましょうね!という事で、これを見てコンベンションを怖がらないで下さいね!