29.売っちゃいけないTRPG

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 最初に書いておくけど、これは俺の個人的意見だからね。

 今回は、最近ちょっとだけ頑張ってるな?という感のあるTRPG業界全体に喧嘩をふっかけちゃいましょう。

 今回の主眼は「買っちゃいけないTRPG」ではなく、制作者サイドが「売っちゃいけないTRPG」についてです。


 最近ず〜っと下り調子だったTRPG業界だけど、ここの所になってやや隆盛の兆し(?)を見せつつあるよね。

 サプリメントの類はおいといて(苦笑)、ファンタジーではない、「新しい種類のTRPG」という奴がいくつも出版されてきているし、それがなかなかの好評を博しているようだ。

 確かに、ちゃんと考えてみれば、「TRPGで見る夢」っていうのはファンタジーに限った話ではないし、むしろ色々な人に掘り尽くされてしまった感のあるファンタジーよりも、新たな分野を開拓するという意味で、「脱ファンタジー」のTRPGシステムを発表していくのも決して悪い事ではないと思う。

 そういう意味においては、今のやり方自体に文句を言う気は全然ないんだ。

 例えそれが「似たようなシステムに違うテイスト」であったとしても、それはケイオシアム社のやり方と大差ない訳だし、むしろ同じルールで色々な世界が楽しめるのであれば、決して悪い事じゃないと思う。

 まあ、似たようなシステムでも細かいところが微妙に違うせいでいらん誤解を招く事も多々あるみたいだけどね(苦笑)


 さて。

 ここまでの文章だと、やや皮肉っぽくはある物の、「いい事です」でまとめられちゃう内容なんだけど…

 ここで終わらないから、「Column&Tips」じゃなくて「Dark Side」に置くんだよね、このテキストは(笑)




 さっきまでの前提だと、「新しい事にチャレンジするのは良い事です」とか「統一ルールで色々な世界が楽しめるのはお得です」っていう話になっちゃうんだけど…

 あえて、ここで書きたいのは、そこまではいいのに、できあがった作品が市販できるレベルじゃない!という一点なんだ。




 「システムで表現しようとしている世界観」に文句をつける訳じゃないし、そもそも「大元のルール」に文句をつけようと言う訳じゃないよ?

 表現しようとする世界観については、結局は制作者サイドがどれだけサポートを通じて世界観を提供するかにかかっているんだし、大元のルールに関しては最終的には好き/嫌いのレベルに落ち着いちゃうんだから。

 

 

 

 

 じゃあ、ここで何に対して文句を言っているかというと…

 それは、要するに、作品がプロのレベルじゃないという点なんだ。


 出版社から「市販品」としてTRPGシステムを発表する以上、最低限クリアーしなければならないレベルという物が存在すると思う。

 例えば、「基本的には脱字や誤植がない」事や、「それ単体で一つの作品として機能する」事。

 あるいは、「完全に”無駄”なページがない」事や、「理解できる書き方をしている」事なんかが、最低限のレベルとしては求められると思うんだ。

 あくまでも「趣味」のレベルであり、「良ければ有償でお分けいたしますよ」という同人レベルに求められる最低ラインと、「仕事」であり「こんなに良い作品ですから是非買って下さい」というプロのレベルでは、明らかにプロのレベルの方が高くなくてはいけないでしょう?

 しかし、最近の乱造(失礼!)されているTRPGをざっと見てみると…

・本体に誤植や脱字が多すぎる(作品とは呼べない

・エラッタの量が尋常ではない(単体で機能できない

・チャートに誤植があって使えない(完全に無駄なページになっている

・ルールの説明が不十分で、しかも補足が足りない(理解ができない

 こんな作品が、実に多いと思うんだ。


 この原因は、「ディベロップメント不足」による物が大半だと思う。

 例えば、ルールに精通している人がルールブックを書いてしまうから、どうしても「当然の事として書かない」っていう結果になってしまうし、知っているからこそ「誤植」や「脱字」を頭の中で補足してしまう為に気付かない。

 何度もやり込まないから、「想定外」の問題が起きてエラッタを出さなければならなくなってしまうし、チャートなんかも細かいデータの符号をしないから誤植してしまう。

 結局は、こういう所が問題で、作品のレベルを落としてしまっているんじゃないだろうか?

 本来、作品を作る時に一番重視しなければならないのは、「ディベロップ」の段階なんだ。

 ディベロップが不足すると、せっかくの作品を理解して貰えないだろうし、理解して貰った所で使い辛さが原因で定着してくれない

 作品自体の質を決めるのは内容なのは当然の話だけれど、内容と質を一致させるのはディベロップなんだよね。

 システムを作る人をエンジンだとして、ディベロップする人がタイヤだと思えばいいんじゃないだろうかな?

 いくら高品質のエンジンを搭載したところで、空気の抜けた(しかも質の悪い!)タイヤであれば、車としての「性能」は、決して良い物とは言えないだろう。

 まあ、タイヤ自体がいくら良くても、エンジンがポンコツでは意味が無いんだけどね。


 確かに、今のTRPGの状況を活性化するには、四方に手を伸ばさなくてはならないのは仕方がないところだとは思う。

 四方に手を伸ばすためには、様々なシステムを作り上げなければならないのも、仕方がない事だとは思うんだ。

 でも、ディベロップが足りず、「作品」として機能できないようなシステムは、売ってはいけないと思う。

 そうしないと、結局は「プロレベルのTRPG」が無くなってしまうだろうし、プロの存在し得ないメディアは存続しないんだから。

この記事を書いた人 Wrote this article

如月翔也

 如月翔也です。TPGとアナログゲーム、PCが大好きな中年男です。このブログでTPGについて色々触れています。コメントを貰うと非常に喜ぶのでお気軽にコメントをお願いします。