TRPGで最もよく使われる乱数発生器(=ランダムに数字を作る物)といえば、まずはダイスがあげられるでしょう。
ちょっと昔まではロールプレイングゲームの「Role(役割を演じる)」が「Roll(ダイスを振る)」と勘違いされる事が多かった位に、TRPGにはダイスが使われていました。
その状況は最近でもあまり変わりはありませんが、最近では「カード(主にトランプ)を使って遊ぶTRPG」も増えてきています。
そこで、今回はダイスを使うTRPGとカードを使うTRPGの根本的な違いと、それぞれの楽しみ方の違いを考えてみましょう!
さて、まず最初に、ダイスとカードには大きな違いがあるのはお分かりでしょうか?
ダイスというのは、工場でちゃんと作られた物であれば、それがイカサマ用のダイスではない限り、それを振った時にどの数字が出るかは完全に不規則です。
例えば、D100ロールで「1」が5回連続で出る可能性も、非常に低くはありますが存在します。
しかし、カードを使う場合、確かに手元にどのカードが来るかは予想し辛い物の、完全に不規則である訳ではないのです。
例えば、トランプを使ったロールをする場合、途中で使ったカードを山札に戻して引き直さない限りは「A」のカードを5枚以上連続で使う事はできないのです。
あるいは、隣のプレイヤーが「ハートのキング」を持っているのが明らかで、しかもそれが未だに使われていない場合、自分がそのカードを入手できる可能性は皆無なのです。
大抵のカードを使うTRPGでは「数枚のカードを手元に置く」事ができますし、「カードを1枚使うたびに山札に戻してシャッフルする」という事はしませんから、ダイスを使って判定を行うタイプのRPGよりも、確率分布は異なるのです。
そのかわり、カードを手元に置いて使うタイプのTRPGでは、ダイスを使って判定を行うタイプのRPGよりも結果を誘導しやすい事になります。
ダイスを使用するTRPGでは「成功したいロール」でも「失敗してもいいロール」でも、結局は「目標値」どおりの確率分布でしかロールを行う事ができません。
それに対して、カードを手元に置いて使うタイプのTRPGでは、「成功したいロール」で良いカードを使い、「失敗してもいいロール」で悪いカードを使う事で、キャラクターの行動の正否をある程度の範囲内でプレイヤーが決定できるという事になるのです。
これは、ある意味でルール的にプレイヤーの(判定への)関与を認めているという事ですから、格好良く決めたい時に良いカードを使う等の方法で、キャラクターの表現の幅を広げているという事にもなります。
「交渉が得意だが、戦闘はからっきし」という設定の盗賊は、ダイスで判定するシステムでは結局神(運)だのみで表現するしかありません。しかし、カードを使うタイプのシステムであれば、「交渉関係で良いカードを使い、戦闘では悪いカードを使う」という方法で表現する事ができるのです。
また、カードを使うタイプのRPGでは、山札が減るたびに「出るであろうカード」の数が減っていく、という事ですし、捨て札を記憶しておく事で「あとはどんなカードが残っているのか」を知る事ができ、それによって「今後の判定についてのある程度の予測」が可能になります。
そういった点では、「(ゲーム的に)戦略性が高まっている」という事にもなるのです。
本来であれば「乱数」を用いるはずのTRPGですが、カードという「範囲の決まった乱数」を導入しているシステムも、なかなかに趣が深い物なんですね。
ダイスに「成功しろッ!」と念を込めて振るのも楽しいですが、自分のカードをにらみつけて唸りながら判定するのも、また面白い物ですよ……?