この記事は約 11
分で読めます
-
目次 Outline
01.辛口レヴュー・「ドラゴンマーク・リプレイ」
- 最初に書いておくけど、これは俺の個人的意見だからね。
- 今回は、富士見書房・富士見ドラゴンブックから出された「ドラゴンマーク・リプレイ 若き竜の羽ばたき」(安田均:監修 友野詳/グループSNE:著)についてのレヴューをお送りします。
- 今回、この本をざっと読んで思ったのは、以下の7点です。
- 1.TRPG本体が出る前にリプレイ出すなや。
- 2.解説が多すぎ。
- 3.友野詳の「ドラゴンマーク」シリーズを読んでないとついて行けないぞ。
- 4.アニーの「説教」が多すぎる。しかも、全部的を得ている。
- 5.と言う事は、「プレイのレベルは低かったです」と言っているのと同様。
- 6.かつ、「キャラクタープレイ」としても「ロールプレイ」としても中途半端な行動が多かった。
- 7.内輪ネタ(あるいはマニアネタ)が多すぎる!
- 8.「GURPSドラゴンマーク」を買おうという気が薄れてしまった。
- 以上です。
- では、順番に説明していきましょうか。
-
TRPG本体が出る前にリプレイ出すなや。
- 言葉の通り。
- この本自体が「TRPG入門書」という形ではない以上、リプレイ=読み物であるか、リプレイ=ゲームの紹介であるべき。
- しかし、この本の中で述べられているのは「ドラゴンマーク」ではなく、「GURPS」のルールの説明であるのが大半で、しかも中途半端にしか説明されていない為、「ある程度GURPSを知っている人」にしか通用しない。
- それであれば、最初から「GURPSを知っている人」を対象にして、サマリーでもいいから「ドラゴンマーク」のルールを解説して欲しかった。
- これは、TRPG本体が出てないから「GURPS」で引っ張っている、というのが見え見えで、「そんならTRPG本体が出る前にリプレイ出すなや!」と言いたくなってしまう。
-
解説が多すぎ。
- 先にも書いたように、「入門書」としては不十分だし、「(ゲームとしての)ドラゴンマーク先行情報」としても不十分な作りである上に、「(ゲームとしての)ドラゴンマーク」・「(小説としての)ドラゴンマーク」・「GURPS」についての解説が多い。
- どれくらい多いかというと、この解説全てをカットすれば、リプレイをもう1話掲載できるのではないかと思ってしまう程である。
- しかも、やっぱり先に書いたように、解説の1つ1つが不十分で、しかも3つの物を別々に解説しているため、はっきり言って読みづらく、わかりづらいという印象しかない。
-
友野詳の「ドラゴンマーク」シリーズを読んでないとついて行けないぞ。
- これも言葉の通り。
- 「解説」の中でわざわざ友野詳の「ドラゴンマーク」シリーズについて触れているのにも関わらず、「解説」だけではついて行けない。
- と言うか、リプレイ(あるいは小説)中で「重要なポイント」となっている部分の説明がないか、あるいは曖昧なのだ。
- これは明らかに友野詳の「ドラゴンマーク」シリーズを読んでいる人対象のリプレイになってしまっている、と断言しても言いと思う。
- しかも、困った事に、小説の方では明らかになっていない(っていうか、小説の中では引っ張っている)事について「解説」と「リプレイ中」でさらっと書いてしまっている。
- これでは、小説版を読んでドキドキしていた読者にはいい迷惑だろう。少なくとも、俺には迷惑だった。
- 従って、これは友野詳の「ドラゴンマーク」シリーズを読んでいないとついて行けないくせに、読んでいる読者には打撃を与えるという作りになっていると言わざるを得ない。
-
アニーの「説教」が多すぎる。しかも、全部的を得ている。
- 「キャラクタープレイ」で突っ走っているPCの「アニー」。このプレイヤーが、リプレイの中で何度も「プレイについて」の説教を他のプレイヤー達に行っている。
- この「説教」の回数が多い上に、その全てが的を得ているのが問題でもある。
- アニーの説教は正しい物だとは思うが、読み物としての「リプレイ」には不要であり、入門書としての「リプレイ」には難しすぎるのだ。
- 従って、この「説教」は本来は収録すべきではなかったのではないだろうか。
- ついでに、主人公格の「アルト」の「編集して下さい」発言や、それに付随する「自分で考えなければ〜」や「編集はしない」発言も、回数が多すぎ、しかも「読み物」「入門」の2つの要素を阻害しているようにしか思えなかった。
-
と言う事は、「プレイのレベルは低かったです」と言っているのと同様。
- 更に問題なのは、これを収録していると言う事で、「私たちのプレイのレベルは低かったです」と言っているのと同様である、という事だと思う。
- リプレイの目指す本来的な意味ではないが、こんな状況であっても質の高いプレイを収録する事で、「こんな素敵なプレイをする事ができるんですよ」という、目標点の明示という事ができた可能性はあると思う。
- しかし、この「説教」等を収録する事により、「1プレイヤーに説教されなければならない程に」、あるいは「1プレイヤーがあえて他のプレイヤーを説教しなければならない程に」レベルが低かった、という事を暗に言ってしまっている。
- これでは、このリプレイを読む意味が何もないとしか言えないのではないだろうか?と思ってしまう。
-
かつ、「キャラクタープレイ」としても「ロールプレイ」としても中途半端な行動が多かった。
- これは考え方による物かも知れないが、俺が凄く気に入らなかった事に、「キャラクタープレイ」としても「ロールプレイ」としても中途半端な行動が多かった、という事がある。
- 特に、小説という形で発表されているキャラクターを演じているのだから、それらしくするのか、あるいは全く「別の存在」として扱うのか、それをはっきりさせなければ読者に失礼であると思う。
- しかし、実際の所はプレイヤーとキャラクターは半ば融合しているように思えたし、「話を引っ張っていく」という雰囲気もあまり見られなかった。
- ここで「プレイヤー=キャラクターではない」という事を明確にするか、あるいは「シナリオを引っ張っていく為にある程度個性を殺す事もある」という事をはっきりさせてくれるとまだわかりやすかったのだが、そう言う雰囲気も見られなかったと思う。
- 大変失礼だが、「小学校低学年の授業」のように、遊びたがる他キャラクター達をアニー先生と助手GM+たまきさんが怒っている風景、というのが頭に浮かんでしまった。
- これでは、TRPGを紹介するどころか、間違った風景を教え込んでいる事になるのではないだろうか?
- 俺は少なくとも、(正解・不正解は別として)ロールプレイ・キャラクタープレイというのはTRPGにとって避けられない物であり、それについて(婉曲的にでも)触れるのがリプレイの必須条件だと思う。
-
内輪ネタ(あるいはマニアネタ)が多すぎる!
- これだけで十分な気もするが…
- アイドルネタ、海底王国ネタ、特撮ネタと、とにかく内輪ネタ(あるいはマニアネタ)が多すぎた。
- 別にTRPGがマニアックじゃないとは言わないが、アイドル・海底王国・特撮は別の種類のマニアなんじゃないだろうか。俺的にはアニメでさえもついて行けない人間だから、なおさらに腹が立った。
- リプレイ中でもついていけないプレイヤーが多かったみたいだし、その前にリプレイを買う人の事を考えていたのだろうか?
- しかも、内輪で盛り上がった分はカットすれば問題ないだろうに、カットしていない為に読者も「おいて行かれる」事になる。
- 1冊560円とはいえ、お金を出している以上は客であり、生活の糧を出してくれる人であるはず。
- これが芸術であれば「理解されなくても良い」と言えるだろうが、商業原則に則った「文庫本」で「理解されなくても良い」というのはどうだろうか?
- 理解されない事を考えていなかったのであれば、それは論外だと思う。
- ちょっとであれば、あるいは浅ければ良かったのかも知れないが、この本では多過ぎ、しかも深すぎたと思う。
-
「GURPSドラゴンマーク」を買おうという気が薄れてしまった。
- 最大の失点は、読者(少なくとも俺)の「GURPSドラゴンマーク」を買おう、という気をそいでしまった事だと思う。
- 結局、TRPG本体が出る前に、あるいは小説が完結(あるいは一段落)する前に「ドラゴンマーク・リプレイ」を出した理由は、「GURPSドラゴンマークを買って貰おう」「小説ドラゴンマークも買って貰おう」「出来ればGURPS本体・サプリメントも買って貰おう」という理由だと思う。
- そうでなければ、小説の展開が始まったばかりのナイーブな時期に、あえてネタバレする可能性のあるリプレイ等は出版しないと思うからだ。
- しかし、目的が多すぎた為、色々な要素を詰め込みすぎた。
- しかも、個人的な趣味を入れすぎた。
- その結果、「小説読者にダメージを与え」「ゲーマーに魅力を感じさせず」「TRPGプレイヤーにアピールを与えない」物になってしまっているのではないだろうか?
- 俺は、少なくとも小説版ドラゴンマークを読んでいる間は、「給料が出たらGURPS完全版本体とドラゴンマーク、そしてGURPSマジック完全版は絶対に買おう!」と思っていた。
- むしろ、ドラゴンマークが出るからこそ、完全版とマジック完全版を買い控えていた部分もある。
- 今の時点ではGURPSは文庫本シリーズがあるから、ドラゴンマークが出るまでは我慢しようと思ってた。
- でも、どうでも良くなってきちゃった。
- サポートの為の展開がコレなんだから、完全版もドラゴンマークも同じでしょ、と思ってしまった。
- これでは、駄目でしょう。