053:「一人歩き」と「暴走」

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 TRPGのセッションは、ある意味で「小説を書く」事や「演劇をする」事に似ています。

 それを証明するように、プレイヤー(あるいは小説家・役者)の作ったキャラクターが、それを作成した(あるいは表現している)本人の制御を外れ、自己主張を始めてしまうという事が、TRPGのセッションではままあります。

 この、「キャラクターが作成者の手を離れ、自己主張を始めてしまう事」をキャラクターの一人歩きといいます。

 これは、1人のキャラクターを長く表現し続けていくと、そのキャラクターが表現者の中で確固とした自我を持った存在として確立されていき、ついには表現者が何かを考える事無く、キャラクターがキャラクターとしての表現を始めてしまう、という事で、数多くの小説家や漫画家、あるいは役者や俳優が「実際に体験した」と証言している事です。

 これは、そのキャラクターの表現者が常に「この状況の場合、このキャラクターなら、このような理由付けにより、こう行動するだろう」という事を考え続け、それが自然と作成者の身に付き、ごく自然な事として「そのキャラクターの思考」を行う為、最終的にはそれを意識する事なく、最もそのキャラクターらしい行動を決定する様になっていく為でしょう。

 さて、そんな「キャラクターの一人歩き」ですが、これはTRPGをしている人にとっては非常に楽しい事ですし、ある意味ではTRPGの最高の到達点とも言えるでしょう。

 しかし、この「一人歩き」に酷似しており、同時に非常に楽しくない状況という物もあります。

 ここでは、それをキャラクターの暴走と名付けましょう。

 キャラクターの暴走は、表現者(あるいは作成者)がキャラクターの個性に振り回され、周りを見る余裕すら無く「キャラクターの個性の表現」に固執している状況を指します。

 一人歩きするキャラクターは完全にナチュラルな存在であるのに対し、暴走するキャラクターというのは「肥大化した個性」をたれ流し続けるだけの存在であり、TRPGのセッションにおいて最大の障害となり得る深刻な問題でもあります。

 この「一人歩き」と「暴走」の違いですが、これは簡単にプレイヤーの責任であり、問題であると言えます。

 「一人歩き」するキャラクターというのは常に真剣に考え、常に葛藤の中にあるという状況から生まれるのに対し、「暴走」するキャラクターというのはプレイヤーがキャラクターに押しつけた「個性」という物に固執し、同時にそれを必要以上に強く表現しようとする状況から生まれるからです。

 TRPGではキャラクターを引き立たせる為に「個性」というキーワードを利用する事が大変多いのですが、それを必要以上に盛り込もうとすると、キャラクターにリアリティがなくなるばかりか、キャラクターを暴走させ、セッションを破壊する要因となりかねないのです。

 TRPGでは様々なバランスが求められます。

 実は、その中には、「キャラクターの個性の強さと整合性」のバランスの良さも求められている事なのです。

 さて、貴方のキャラクターは、貴方の言う事をよく聞くお利口さんですか?

 それとも、貴方を振り回し、周りをも振り回す暴走機関車ですか?

 せっかくのキャラクターですから、どちらでもなく、貴方に負担を与えずに問題を解決してくれる、「理想のパートナー」になって欲しいものですね。

この記事を書いた人 Wrote this article

如月翔也

 如月翔也です。TPGとアナログゲーム、PCが大好きな中年男です。このブログでTPGについて色々触れています。コメントを貰うと非常に喜ぶのでお気軽にコメントをお願いします。