さて、世界中で最も一般的、かつ好まれている物と言えば、なにをさておきまずは「酒」でしょう。
「酒」は人間が火を使う事を覚えたのとさほど変わらない時期から、長い間人間と共にあったと言われていますし、「酒」を作って飲むのは人間だけであり、だからこそ酒というのは人間の文明と大きな関わりがあると言われています。
さて、中世ヨーロッパやファンタジーRPGの世界を見回すと、やはりというか、当然というか、「酒」というのは重要なファクターとして常に存在し続けている物です。
特に、中世ヨーロッパやファンタジーRPGの世界では、「酒」は「水」代わりに飲まれており、まさに「最も身近な物」とされています。
しかし、我々日本人には「水の代わりに酒を飲む」とか、「一日中アルコールを摂取している」という事が今ひとつわからないのではないでしょうか?
そこで今回は、中世ヨーロッパでの事実を元に、ファンタジーRPGで何故「酒」が普通に飲まれているかを考えてみましょう。
まず、歴史的・地理的に見ると、中世ヨーロッパでは「水」は飲めない物がほとんどであったという事実があります。
これは、地中に流れている水の種類の問題によります。
日本の伏流水の殆どは「軟水」という飲むに適した水なのですが、ヨーロッパでは「硬水」という飲むに適さない水が殆どでした。
また、日本は降水量が多く、一年を通して水の供給がなされている「水の国」ですが、ヨーロッパは「飲める水」の相対量が少ない上に、降水量がまばらであり、水はいつでも手に入る物ではありませんでしたし、水は「腐る」為に長期の保存に適さなかったのです。
その為、ヨーロッパの人々は「水」を飲む事はできず、その代わりに「大量に手に入る」果実を使って「腐らない」アルコールを作り、それを飲んだのです。
また、「強い酒」を作る為には「蒸留」という技術が必要ですが、中世の技術力では「蒸留酒」というのは高級品であり、普通は「弱い酒」であるのが一般的であった為、多量に飲んでも「酔う」事がほとんどなかった為、一般的であったとも言います。
このように、中世ヨーロッパでは「水は飲めない」為にアルコールを必要とし、また、「強いアルコールは少ない」為に「酔わない」為、一般的になった、という事がいえる訳です。
と、言う事は、中世ヨーロッパの世界を舞台としたファンタジーTRPGでも同じ事がいえる、という事になります。
それを考えると、レベルの低い冒険者が安酒場で酔っぱらって喧嘩をする、なんていうのはいかにもありそうに見えて、実際はほとんどありえない、という事になるんですね。
酒を「命の水」と言う事もありますが、中世やファンタジー世界では「水代わり」という事は、まさに「命の水」なんですね……