最初に書いておくけど、これは俺の個人的意見だからね。
今回は、TRPGにおける(マイナーな)ジャンルの一つ、「ホラー」についてちょっと駄文をば。
そもそも、「Luna Arc」なんていうオリジナルのホラーTRPGを作ってるくらいですから、結構ホラーに関しては思う事も多いので、ちょっとしたコダワリの文章です。
今回は、とりとめもなく行ってみようと思いますので、よろしくお付き合い下さいな。
TRPGというのは、基本的には何かの障害(ミッション)を克服(クリアー)していくものである、という側面があると思うんですね。ゲーム的には。
例えば、それがファンタジーを題材にするのであれば、「強力なドラゴンを闘って倒す」だとか、「邪神復活の生け贄の為にさらわれた少女を救い出す」、なんていう、色々なパターンが考えられる訳です。
でも、それがファンタジーであろうが、SEであろうが、ギャグであろうが、西部劇であろうが、基本的には克服すべき障害には数多くのバリエーションがありますし、ジャンル自体でそれが明確にされているのは、やっぱりホラーしかないのではないか、と思うんですね。
そう、ホラーの場合、克服する主体が「プレイヤー」であるか「キャラクター」であるかは別として、克服すべき障害というのは、基本的には恐怖であるハズなんですよ。
そういう意味では、ホラーというのは、実に扱いやすい題材のはずなんですよね。
なにせ、それが他のジャンルであれば、まずは「何が障害になるのだろう?」から入るところをいきなりパスして、「それはどんな恐怖なのだろう?」という部分から入れる訳ですから。
それなのに、現実として、ホラーというのはジャンルとして非常にマイナーなものに過ぎないですよね?
それは、何故なのか、と考えてみた訳です。
その結果、ホラーは結構難しいな、と思ってしまったんですよね。
まず、最初に。
TRPGは「空想で物語を楽しむ」と受け止められている傾向がある。
そうすると、TRPGで扱う物として、一番最初に思い浮かぶのは、やっぱり「幻想的な物語」=「剣と魔法の世界」という認識が、非常に強くあるんですよ。
さらに、読み物や映画の「ホラー」=「恐怖」というのは、基本的に非常にマイナーなジャンルに分類されるんですよね。
そうなると、TRPG自体がマイナーなのに加えて、ホラーというマイナーな要素を取り込んでしまっているわけですから、自然とそれを好む人の数は少なくなってしまう、という構造になってしまっています。
しかも、「ホラー」自体がマイナーなのに加えて、「ホラー」というジャンル自体が、さらに様々なジャンルを内包しているのもネックとなってしまいます。
例えば、「サイコパス物」や「スプラッター物」、「妄想物」に加えて、広い意味で言えば「モンスターパニック物」ですら「ホラー」に分類されますし、大体のホラー好きの人はその中のどれか1つを好む、という傾向にありますから、表現したいジャンルのホラーに対応できるプレイヤーというのは極端に数が少ないんですよね。
さらに、「ホラー」というジャンルは、非常に大きなデメリットを背負っています。
それは、ホラーはゲームと相性が悪いという事です。
「ホラー」という物は、恐怖を楽しみの基本とするものです。
そして、恐怖という物は、大雑把にわけて、「生理的な嫌悪感」と「未知のモノへの不安感」から来る物です。
例えば、「スプラッター物」や「モンスターパニック物」というのは、例えば大量の血液であるとか、内臓であるとか、あるいは醜悪な外見のモンスターに対する生理的な嫌悪感が重要なファクターになります。
しかし、生理的な嫌悪感というのは直感的な物にしか発生しないものですし、何度も繰り返すと慣れてしまいます。
TRPGは「言葉」で行うゲームですから、大量の血液や内臓、醜悪な外見の怪物を直感的に理解させる事は至難の技ですし、それができたとしても、すぐに飽きられてしまうんですね。
それに対して、「妄想物」や「サイコパス物」などに代表される未知のモノへの不安感というのは、そもそも未知のモノを言葉で表現している時点で非常に難しいんですね。
「暗闇に光る2つの目、そして地獄から響くような重低音のうなり声。被害者は喉笛をかみ切られて即死した」までを表現するのはいいのですが、プレイヤーの誰かが「それってライオンでしょ?」と言った瞬間に、それは未知のモノでは無くなってしまい、「恐怖」の質が変わってしまうのです。
そう言った事を考えると、「ホラー」というジャンルは、マスターをする側にもプレイヤーをする側にも、素晴らしいセンスを要求してしまうジャンルなんですよね。
マスターはルールブックに載っている(あるいは自分の作り出した)恐怖を、それが何であるか悟られる事なく、しかし最大限の恐怖を引き起こさせるように表現しなければならない。
プレイヤーはプレイヤーで、マスターの表現するモノを直感的に把握し、なおかつギリギリのラインまでそれが何であるかの結論を保留するだけのキャパシティを持っていなければならない訳です。
そのどちらかが欠けてしまうと、例えば
「 君達の目の前に半魚人が現れた!」 | |
「 怖くないよ、それ!」 |
であるとか、あるいは
「 そこで君達が見たのは、濁った瞳には光はなく、全身に生えた鱗には腐りかけた海草がびっしりとはりつき、よろめくような足取りながらも一直線に君達の方向に歩いてくる、不気味な人影だった…」 | |
「 半魚人だ!」 |
と言った、「恐怖ではないものを楽しむ」ゲームになってしまうんですよね。
ですから、やっぱり、「ホラー物は難しい」と思います。
ですが、逆に言えば、マスター・プレイヤーの両者にセンスがあれば、それだけダイレクトに堪能できるジャンルなのだとも思います。
確かに、難しいジャンルではあります。
ですが、その分、色々と表現できる物も多いでしょうし、ある意味クトゥルフの呼び声以降手つかずに近いジャンルでもありますから、色々な意味で挑戦し甲斐のあるジャンルなのかも知れませんね。